申込金と手付金との違い

申込金が戻らない時もある

 

建築会社と、アパートや住宅の建築契約をする場合、その契約前に申込金を支払う事があります。しかし、申込金を支払った後、何らかの理由で、申込者が契約をキャンセルした場合、申込金はあなたに返還されると思いますか?

 

申込金は、契約金じゃないから当然返される。とお思いでしょうが、必ず返されるとは限りませんよ。状況によっては、戻らないどころか、建築会社が契約準備の為に掛けた費用の一部を負担しなければならない事もあるんです。

 

一つ例をあげましょう。最近キャッシュカード詐欺が流行っているらしいですが、この詐欺に合い、キャッシュカードを詐欺師に渡してしまい、暗証番号まで教えてしまった場合は、被害者に重大な過失がある。という事で、被害は補填されないのです。

 

 

 

経験の浅い不動産業者は、「申込金や手付金は戻りますから大丈夫。順位確保するだけで、キャンセルしても構いません。」と平気で言うかも知れませんが、申込金や手付金があなたの手元に戻るかどうか、実際はケースバイケースです。いい加減な営業の言葉に騙されてはいけません。

 

一般消費者だからと言って、常に守られるわけではないんです。あなたが嘘をついていたり、気が変わって約束を守らない時は、それなりの罰金を払わなければならないのです。それが、世の中のルールです。いい加減な営業は何も助けてくれませんよ。

 

 

 

 

迷いがあるなら申込はしない!

 

 

申込金の場合、本契約にならなかった場合は、基本的には返してもらえます。しかし、返してもらうには、自分に落ち度はない事を証明できなきゃダメなんです。

 

契約はまだ先だが、今の状況が契約した後のように話が進んでしまっている場合、建築会社が負担した経費を少しは面倒見なさいよ、大人なんだから。というのが、司法の判断です。

 

契約してないからと言って何時でもぺナルティ無しで、キャンセルできるとは思わない方が良いです。

 

キャンセルする可能性があるなら、申込や、申込金を渡すようなことは絶対しちゃいけませんよ。

 

 

 

 

 

契約が白紙解約にならない場合もある

 

 

 

建築条件付土地(土地の買主は、契約後一定期間内に売主と建築請負契約を締結できなかった場合、この土地売買契約は、白紙解約となる条件の事)の契約でも、一定期間内に請負契約が結べない場合、契約は白紙解約になる。と定めてはおりますが、

 

これは、買主が契約成立に向けて、真摯に対応したかどうか。というのが重要な点なんです。契約成立に向けて、真摯に対応(相手方に協力する事)してない場合は、白紙解約にはならないんです。

 

 

土地の契約をしたが、建築業者と打合せをしない。白紙解約したいがために変更を繰り返し、時間切れをわざと狙った。(契約後、買主の気が変わったんでしょうね。)なんていう場合はぺナルティはあって当然だと思いませんか。私は買主側の仲介人だったので、請負契約が出来ないんだから、契約書に書いてあるように白紙解約は仕方ない。と思っていました。しかし、このケースでは手付金150万円を買主は没収されています。

 

 

新築マンションの場合は、必ず戻ります

 

新築マンションで、今も申込金を受領しているかどうかは解りませんが、申込後いかなる理由でキャンセルになったとしても、申込金は戻ります。戻ってこないとしたら、宅建指導課に電話してすぐに返すように言ってもらって下さい。

 

申込金は10万円にしている会社が多いと思いますが、もらう理由は、申込者の真剣度合いを確認する為、つまり、冷やかしじゃないかを判断する為だけです。あまり意味は無いから、マンション分譲業者は、面倒な申込金なんてもらわない方が良いと思います。建築会社やマンション分譲会社も本当は不要だと思っているんじゃないでしょうか。これが無ければ、トラブルや面倒な入金管理をしなくて済むのですから。

 

 

申込金と手付金との違いは?

 

申込金は、申込者に落ち度がなければ、返ってくるものですが、手付金になると話は違います。手付金は契約時に相手方に支払われる為、払った時点で契約が成立しています。契約をしているんですから、とにかく契約書の取決めが最優先されます。

 

契約書には、こういう場合は、手付金は没収される。とか、手付金を倍にして返す。とか小さい字で書かれています。手付金が返ってくるケースも有りますが、これは、契約が白紙解約になる場合だけです。白紙解約になるのは、私の経験だと100件に1件あるか無いか、1%にも満たないケースです。

 

 

売買契約では、手付放棄の解約はたまにある

 

20年位前ですが、売主側の仲介業者があまりにもだらしなく、契約翌日に買主さんから「あんな会社の仲介で買いたくない。手付金50万円を放棄し、契約を解除します」と連絡があったんです。担当に事情を聴いてみましたが「売主側の業者は、書類の扱いが雑で、買主さんが記名押印した書類を汚したり、自分の会社の立会印を雑に押して、さらに汚したりして酷い物でした。買主さんも唖然としてました。」と言うのです。

 

私の方で契約書のコピーを確認しましたが、乾いていない場所をベタベタ触ったようで、汚れた契約書になっていました。結局買主さんは、手付金50万円を放棄(売主にあげてしまう事)し、更に仲介手数料30万円を支払い、解約しました。買主さんは、80万の損をしても、酷い不動産屋との契約を解約する道を選んだのです。

 

 

売買契約の場合、手付解除期間というものがあります。契約日から1週間~1か月位の間であれば、買主・売主は、理由に関係なく自由に契約を解除する事が出来るんです。契約を解除(無かったことにする。という事)するには、買主の場合、手付金の放棄と、仲介手数料の支払。売主の場合、手付金の倍返し(買主から手付金を預かっているので、倍にして返します)と、仲介手数料の支払。をすれば、無条件で契約を解除できるんです。まあ、解除できるとは言っても、かなりの大金を支払う事になりますから、契約を解除する時は、よく考えた方が良いですね。

 

 

解約になっても仲介手数料は請求される

 

仲介で不動産の売買契約を行うと、仲介手数料を仲介業者に支払わなければなりません。

払わなくてもいい場合は、契約が白紙解約(契約は無かったことになる)になった場合だけです。その為、手付放棄による解約や、契約違反による解約の場合は、必ず仲介手数料を請求されます。なぜ請求されるのか?と言うと、請求出来る。という判例が出ているからなんです。

 

契約まで色々と準備、調査をして書類を作成するのが仲介業者の役割です。ある意味、契約までには業務のほとんどを終えていると言ってもいいのです。金融機関との折衝や、物件に問題が無いか調査を行い、契約スケジュールを打ち合わせたり、価格などの条件交渉をしたり、仲介業者が行う仕事は多いです。その為、契約した時点でほぼ仲介業者の仕事は完結してるんです。

 

 

契約後、買主の購入意欲が無くなり「手付金を放棄して解約する」のはもちろん買主さんの自由です。しかし、買主の身勝手で契約が解約された場合、仲介手数料はちゃんと払え!という判例はたくさんあります。手付放棄をする時は、仲介手数料の事をお忘れなく。契約時や契約前に手数料を支払います。という書類にしっかりサインしてませんか?

 

 

 

手付解除の実例

 

今から30年位前の話です。横浜市内の中古マンションを私のお客さんが気に入り、契約になりました。しかし、契約から数日後「契約を解除したい」と連絡がありました。理由は覚えていませんが、契約を解除するのは、買主の自由です。私は「では、手付金は売主に没収されます。そして、仲介手数料100万円を当社に払う事になります。よろしいですか?」と言いました。買主さんは納得できない様子で「手付金は仕方ないが、仲介手数料は契約が成立してないんだから、払わない!」と言ってきたのです。

 

最終的にはちゃんと払ってもらいましたが。当時は、こういうケースは結構多かったんです。その為、最近は契約時に、仲介手数料の支払約定書や、媒介契約書等を買主さんに説明し、サインしたものを業者が保有するという習慣が出来たのです。ちゃんと払いますという書類を2枚も書かせて、払う払わないの紛争を避けようとしているのです。

なんか、買主を疑っているようなので、私はこのやり方は嫌いですね。うちは、媒介契約だけ締結して支払約定書はもらいません。※そこまでしなくても良い、信用できる人と契約をしていますから。

 

請負契約には要注意!

 

最初の記述にもありますが、請負契約には要注意です。でも、まともな建築業者なら、「ここまではサービスですが、ここから先の業務は費用がかかります。」「契約にならなくても、ここまでかかった費用を負担していただきます。」って、ちゃんとお客さんに伝えていると思います。

 

建築の場合、調査やプラン立案等で時間と経費がかかるんでしょう。実際、契約に至っていなくても建築業者の支払った費用の一部を払う事になったケースも有るんです。相手が不動産業者の場合と、建築業者では、法の対応が違うようです。

 

10年以上前、土地の売買契約の仲介をした時の話ですが、売主の建築業者と、一般の買主との間で、紛争が起きました。建築業者と私(宅建業者)で話をする事になりましたが、建築業者は、敵意むき出しで「あなたとは仲間じゃないから、絶対譲歩しない!」の1点張りでした。

 

そんなに興奮しなくてもいいと思うんですが。 

 

結局弁護士に間に入ってもらい、解約になりましたが、建築業者と不動産業者はソリが合わないですね。建築業者は不動産屋があまり好きではないようです。